「ベニスの商人」は、シェイクスピアの法廷サスペンス&ロマンス・コメディーです
あらすじ
バサーニオはポーシャという女性と結婚したいが彼女に会いにいくための旅費が足りないので
友人のアントーニオにお金を借りたいと相談します
頼まれたアントーニオにも貸せるだけのお金が手元にないので、友達のためにシャイロックという男からお金を借りることにします。
シャイロックは、お金を貸すことに同意はしますが、契約書を書かせます。
そこには【期日通りに返済できない場合は、金と同じ1ポンドの重さの肉を切り取る】ということが書かれていました。
アントーニオはその誓約書にサインします
バサーニオはポーシャに求婚するために結婚試験に挑みます。この結婚試験はポーシャの父親が残した遺言書に書かれていたもので、求婚する人は全員この試験を受けなくてはいけません。
内容は「金・銀・鉛」で作られた3つの箱から正しい箱を選ぶ、「箱選び」で正解すれば、結婚できるが、、間違えたら二度と他の女性には求婚しないと誓えというものです。
シャイロックの娘ジェシカはロレンゾという男と駆け落ちを考えています。
なぜなら、シャイロックはこの結婚に反対しているから。
ロレンゾという男はキリスト教徒で、バサーニオの友達です。
バサーニオは結婚試験で見事正解の箱を選んでポーシャと結婚することができました。
アントーニオの船が沈没する事故が起きシャイロックに期限内にお金を返せなくなりました。
シャイロックは契約書に書かれてあることを実行するために裁判所に行きます。合法的な手続きで
アントーニオの肉を切り取ろうとします。
アントーニオはバサーニオにこのことを説明してポーシャのお金で手を打ってもらおうとします。
ポーシャは法廷に呼ばれたバサーニオについていきますが、この時ポーシャはアントーニオ側の弁護士になりすまして裁判に参加します。
彼女はシャイロックに慈悲を求めますが、シャイロックは今までのアントーニオに対して恨み嫉みがあるので、この慈悲を拒否してしっかりアントーニオの肉1ポンドを要求します。
「契約書で交わされた内容はきっちり実行されるべきである」と主張するシャイロックに対して、ポーシャは反撃します。ポーシャは「契約書に書かれた内容は、実行できる」と前置きした上で、
しかし「きっかり肉1ポンドだけをアントーニオの体から取らなければこれは成立されず、血を流すことは許されない」と告げます。
シャイロックはこれは不可能だということで諦めて立ち去ろうとしますが、弁護人ポーシャの反撃は止まりません。アントーニオに危害を加えようとしたシャイロックの行為を逆に問われていきます。
シャイロックは全財産を没収され、死刑という判決が下されました。
ポーシャはバサーニオに変装していたことを打ち明けます。
また、アントーニオの船は実は難破しておらず、船は無事だった情報が入り、シャイロック以外がハッピーエンドで終了します。
主な登場人物
・シャイロック 高利貸しのユダヤ人。
・アントーニオ 貿易商人、常に熱い男
・バサーニオ アントーニオの親友、ポーシャと結婚する男
・グラシアーノ アントーニオとバサーニオの友達
・ポーシャ 莫大な財産を相続した美しい女性
・ネリッサ ポーシャの女中
・ジェシカ シャイロックの娘、ロレンゾと恋仲
・ランスロット シャイロックの召使、道化
・ドージェ 裁判長
Act1
バサーニオはポーシャに求婚しに行くための費用として3000ダカットが必要で、アントーニオのところに相談しにやてきます。アントーニオはバサーニオの申し出を受け入れるも、彼の仕事の関係上現金が手元にありません。そこでアントーニオはバサーニオのために、お金を借りられる人を見つけに行きます。
バサーニオとアントーニオはお金を借りるためシャイロックのもとへ行きます。
シャイロックは3000ダカットを無利子で貸すが、3ヶ月という返済期間設けて契約を交わします。
その契約書の中には、返済期間を過ぎた場合はアントーニオの肉1ポンドで返済しなければならないというペナルティーが書かれていました。この時は軽い冗談として捉えていました。
多くの男性がポーシャと結婚したいと求婚してくるほどの美貌と財産を持ち合わせた女性、それがポーシャです。彼女に求婚を申し込んでくる人たちは必ず試験を受けさせられました。それは3つの箱の中から正しい箱を選び出すというもの。この三択クイズに間違うと求婚できなくなります。多くの男性はこの三択で正しい正解を導き出せないことからポーシャとネリッサは求婚にくる男性を馬鹿にしていました。
Act2
モロッコ王子とアラゴン王子が求婚試験に挑戦しますが、二人ともハズレを引きます。二人が選んだ箱はそれぞれ金の箱と銀の箱でした。
シャイロックの召使いランスロットはシャイロックは悪魔のようなクソ野郎ので出ていくことにしました
シャイロックの娘ジェシカは、アントーニオの友人でキリスト教徒のロレンゾと相思相愛でした。2人はシャイロックが出かけた隙に、金銭や宝石を持ち駆け落ちするのです。家へ戻ってきたシャイロックは、家の状況を見て「裁判だ!金と娘を返せ!」と喚き、キリスト教徒への憎悪を滾らせました。
アントーニオのビジネスは貿易関係です。彼の船が難破したというニュースが飛び込んできました。これでシャイロックに返すお金が無くなってしまい、期限日までに返金することが不可能になりました。
Act3
シャイロックは何がなんでも契約書に書かれた内容を実行したいと思っていました。それはこれまでに受けてきたアントーニオの恨みをここで精算したいと考えたからです。シャイロックはここで「ユダヤ人もキリスト教徒と同じ人間だ。なぜユダヤ人ばかりが不当に扱われなければならないのか?」という有名なモノローグを語ります。
バサーニオは結婚試練に挑戦し見事正解を選びました。これで晴れてバサーニオはポーシャの婚約相手となりました。
ついでにグラシーノとネリッサも結婚が決まりました。
バサーニオはアントーニオの船が難破したこと、そのためシャイロックに返済できず、シャイロックがアントーニオの肉一ポンドを欲しがっているというゴタゴタを耳にします。
バサーニオはポーシャに一連の出来事を説明し、シャイロックに返済すべきお金の2倍の額6000ダカットを工面してもらいベニスに戻ります。
この時ポーシャは「絶対になくさないでね」と言いながら指輪も一緒に渡します。
ポーシャはバサーニオとアントーニオを助けるべくベニスに向かいました。ポーシャとネリッサは男装して法学者になりすまし自らアントーニオの弁護人となり、アントーニオを弁護します。
Act4
法廷でベニスの大公は慈悲による穏便な取り計らいを要請し、バサーニオは借りた金額の倍の6000ダカットで返済を申し出るもシャイロックは契約書通りにすると譲りません。
法学者に変装したポーシャと法律家に変装したネリッサが法廷に登場し、アントーニオの弁護を始めます。それでもシャイロックは譲りません。自分の作った契約書は完璧でそれに従う法律がベニスにあるとシャイロックは主張します。
それに対しポーシャは契約書が完璧であると認め、シャイロックに「この場でアントーニオの肉1ポンドを切りとる」許可を与えます。しかしそれに続けて、「きっかり肉1ポンドを取らなければならない、それ以外のもの、例えば契約書に書かれていない血を流してはいけない。もし流せばあなたの全財産を没収する」と言い添えました。
この無理難題にシャイロックは当惑し、諦め、アントーニオに貸した元本だけ回収することに同意しました。
しかしポーシャの反撃は続き、人の命を奪おうとした罪をシャイロックに着せました。
結局シャイロックは罰として死罪を選ぶか、3つのことを受け入れるかを迫られます。
①キリスト教徒に改宗すること
②財産の半分を駆け落ちしたロレンゾに譲渡すること
③もう半分はベニスが回収すること
アントーニオを救い出した法学者(ポーシャ)にバサーニオは感謝の印としてお金を差し出します。
法学者はお金ではなく結婚指輪を要求します。最初は渋っていたものの、バサーニオはこの要求に応じてしまいます。
ついでにグラシアーノも法律家に変装したネリッサに指輪を渡してしまいます。
Act5
ポーシャとネリッサはそれぞれ自分の夫に対して結婚指輪がないことを問い詰め、。狼狽する夫たちをいたぶります。
いたぶり尽くしたポーシャとネリッサは実はアントーニオを助けたのは自分であるタネ明かしをして夫を許します。難破したアントーニオの船が見つかったという知らせも届きシャイロック以外の誰もがハッピーエンドになって幕が降ります。
モノローグ
何とも美しく月明りがここに安らいでいる!
ここに座って、忍び寄る楽の音に
耳をすまそう。夜のやさしき静寂が
甘美なハーモニーに溶け合ってゆく
影響を受けたアート
多くのアーティストが作品のモチーフにしている
作曲家 ガブリエル・フォーレ
作品 《シャイロック》組曲
シーン
内容 ポーシャへの求婚にバサーニオが成功したシーン
作曲家 レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ Ralph Williams
作品 《音楽へのセレナード》
シーン 5幕1場
内容
シャイロックを演じた俳優
「ベニスの商人」は差別をテーマにしていることで有名です。
シャイロックを通じてユダヤ人蔑視社会の様子が描かれています。
誰からも愛されないシャイロックは娘からも嫌われて、いよいよ一人ぼっちになっていくわけですが、
俳優にとっては興味深いキャラクターで、アル・パチーノ、
アンドリュー・スコット、パトリック・スチュワートなど多くの名優たちが演じてきました。
アル・パチーノ
2004年 映画「ベニスの商人」にシャイロックで出演
2010年 【ブロードウェイ】でシャイロックを演じる
マクラム・フーリ
2015年 ロイヤルシェイクスピアカンパニー主催の舞台
DVD化もされている
・ポーシャが暮らしている街はベルモントという架空の街です。どんな街でしょうか?
・アントーニオとシャイロックはお互い忌み嫌っていますがなぜ嫌っているのでしょう?彼らはどのように話し合うのでしょうか?
・アントーニオとバサーニオの関係性は親友ですが、どのような友達関係なのでしょうか?
・友達がお金に困っているとはいえ、自分が借金してまで友達にお金を借す関係性は普通の感覚で言えば異常です。友達以上の関係性であることは間違いありません。シェイクスピアはなぜこのような関係性に至ったかには触れていません。いろんな想像を膨らませる余地を残しています。
・ポーシャは裁判で見せるような頭の回転の速さや、高い教養の持ち主ですが、父の遺言には従っています。それはなぜでしょう?
コメント