2023年4月に配信された映画の中から傑作映画を10作品紹介します。
「君の名前で僕を呼んで」(2017)
[あらすじ]
北イタリアで家族と暮らす17歳のエリオが、アメリカ人大学生オリヴァーと激しく恋に落ちる。同性愛を描いた、淡くて、切ない思春期のラブストーリー。
[監督]
ルカ・グァダニーノ
[キャスト]
ティモシー・シャラメ
アーミー・ハマー
マイケルスタールバーグ
アミラ・カサール
[状況]
主人公エリオの父はギリシア=ローマの美術史を教える大学教授で母親は翻訳家です。毎年夏になると、家族で北イタリアを訪れます。
そこには母が相続した17世紀に建てられた避暑地があり、毎年夏の間はそこでのんびり過ごすことが恒例行事となっていました。
そんな家庭環境で育てられたエリオには教養があり、本を読んだりピアノやギターを弾いたり、川で泳いだりと、自由な精神と芸術的な才能が垣間見れる青年として描かれます。
[展開]
エリオの父は自身の研究の助手してくれるインターン生を毎年迎え入れています。
今年のインターンに選ばれたのは、博士課程に在学中のオリヴァー(アーミー・ハマー)という24歳のアメリカ人大学院生でした。
オリヴァーはこの夏の間、エリオたち家族と暮らすことになります。このオリヴァーと共に生活が始まるわけですが、次第にお互いの魅力に引き寄せられ、思いを告げることになるが・・・
[見どころ]
まず、1980年代の同性愛者はまだ、世間的に受け入れられない存在でした。
自分が同性愛者であることを告白することは世間的な評判を落とし、それが理由で会社を解雇されてしまうそんな時代です。そのことについては映画「フィラデルフィア」でよく描かれています。
ちなみに映画「フィラデルフィア」の内容は、弁護士のトムハンクスが、「弁護士事務所を解雇された実質的理由はエイズ診断であるもので、これは不当解雇である」としてデンゼルワシントンと共に闘う物語で、傑作です。
当時の人達の同性愛者に対する物の見方がよくわかります。本当にバイ菌扱いされています。
「エイズ」という病気は、同性愛者と同じ空間にいるだけで感染してしまうかもしれないと多くの人が思っている、そんな時代が1980年代です。
そんな状況で青年が同性を愛するということ、それを告白することは非常に勇気のいることです。なので、世間的に公表できない罪の意識が彼らの中にありあります。
だから死ぬまで自分を同性愛者を隠して生きてきた人たちはたくさんいました。
そんな一般的に許されない恋を美しく、古代ギリシャというモチーフを混ぜながら描かれた作品で、非常に丁寧に作られています。
俳優の演技、物語の奥深さ、撮影美、音楽が秀逸な作品です。
「パンチドランクラブ」(2002)
[あらすじ]
主人公バリー・イーガン(アダム・サンドラー)とリナ(エミリー・ワトソン)のコミカルなラブストーリー
[監督]
ポール・トーマス・アンダーソン
[キャスト]
アダム・サンドラー
エミリー・ワトソン
フィリップ・シーモア・ホフマン
[状況]
主人公バリー・イーガン(アダム・サンドラー)は吸盤棒の販売をしています。
姉が7人いて、いつも彼女らに捲し立てられてしまうせいで、ストレスを溜め込んでしまう正確で情緒が不安定。
彼の唯一の楽しみは、プリンを爆買いしてそのポイントで航空会社のマイレージを貯めること(ポイ活のエピソードはの話は実話をもとにしています。
そんなある日、姉のエリザベス(メアリー・リン・ライスカブ)が連れてきた同僚のリナ(エミリー・ワトソン)にバリーが一目惚れをする。
[展開]
その一方で、なんとなく利用してしまったテレフォンセックス・サービスから、様々なトラブルに見舞われることになってしまう…。
[見どころ]
「ありふれた日常の生活の中に奇妙奇天烈なことが起こる」そんな描写が得意のポールトーマスアンダーソンと、平凡な男の人間臭さを演じることが上手いアダムサンドラーのコンビが素晴らしい。
どことなく平凡な展開かなとお思えば、いきなりトラックが突っ込んできたり。普段は臆病者の男が、ここぞとばかりに魅せる勇気にはいつも感動させられる。
「ザ・ウォーク」(2015)
[あらすじ]
1972年、フランスの曲芸師フィリップ・プティが’ワールド・トレード・センターの2つのタワーの間を命綱なしに綱渡りした実話から生まれたハラハラ・ドキドキ・ストーリー
[監督]
ロバート・ゼメキス
[キャスト]
ジョセフ・ゴードン
ベン・キングズレー
シャルロット・ルボン
[状況]
フィリップ・プティを演じるジョセフゴードンが、ストーリーテラーとしてワールドトレードセンターで綱渡りをしようと思った経緯から、実際にパフォーマンスをするところまでを解説していく構成で進んでいきます。
8歳の時にサーカスで綱渡りを目にし、一瞬で魅了され独学で綱渡りを学でいきます。サーカスのテントに忍び込み綱渡りを練習しようとしているところを座長のパパ・ルディに見つかってしまいます。
しかしフィリップの才能の片鱗を見たパパ・ルディは、彼にパフォーマンスを教えはじめます。ところが意見が合わず決別し、さらに父親とも上手くいかず、家を飛び出して、パリの路上で大道芸をして、生計を立てることになります。
[展開]
アメリカで建設中のワールド・トレード・センタービルの記事を偶然目にした彼は、この世界一高いビルで綱渡りで綱渡りがしたいと夢みます。
また、路上でギターを弾く女性・アニーと恋人となり、2人はワールド・トレード・センターの夢に向かって共に歩み始めます。。
[見どころ]
フィリップの夢を現実化させるまでの準備、過程、計画そして実行がそのものがアート作品のように描かれます。
フィリップの友達はヘタしたら逮捕される可能性や怪我をするリスクがあるにも関わらず、協力して一緒に夢を実現させたことが非常に美しいと感じました。
フィリップのこうした行動は彼自身の言葉からいうと「詩的表現」であり、そのモチベーションがお金を稼ぐとかではないピュアな芸術的欲求からきていることにも心打たれます。
・綱渡りのニュースは世界中を駆け巡り、フィリップは罰としてセントラルパークでの綱渡りを課せられるだけで済んだという司法処置も粋であるように思います。
・今でもその場所にWTCが普通に存在しているような錯覚を起こさせる映像技術も本作の見どころです。
・ジョセフ・ゴードンの完璧な役作りで言えば、フィリップという特質なキャラを見事に掴んでいました。フランス訛りと綱渡りのスキルにおいては安心して見ていられるレベルなのでさすがです。
「ハンナ」(2011)
[あらすじ]
誰も寄り付かないような山奥で、冷徹な兵士になるため育てられた少女ハンナ。やがて母の仇を討つため外の世界へ飛び出していき、最後には自分の出生に関わる重大な事実を知ることになる、アクションムービー。
[監督]
ジョー・ライト
[キャスト]
シアーシャ・ローナン
ケイト・ブランシェッド
エリック・バナ
ジェシカ・バーデン
[状況]
人里離れたフィンランドの山奥。電気も通っていない簡素な小屋で、16歳の少女ハンナは父エリック・ヘラーと生活していました。
ハンナは幼い頃からあらゆる格闘術、何ヶ国語も操る語学力、を父から叩き込まれます。
全てはハンナの母を殺害したCIAエージェント、マリッサ・ヴィーグラーに復讐するための訓練として。
ついに準備が整い、父と娘の復讐讐劇が始まる。
[展開]
まずはマリッサ率いるCIA武装集団を山小屋に誘い出し、ハンナはわざと捕まり、CIA施設に送還されます。
収容されたハンナはマリッサ・ヴィーグラーに会いたいと告げます。
偽装したマリッサを投入させCIAは様子を伺いますが、ハンナは見事な殺傷スキルで偽マリッサを殺害し逃亡します。
ハンナ的にはこれで復讐を果たしたと思い込んでいるのですが、実際のマリッサはまだ生きており、暗殺者を雇いハンナを捕獲しにいくという流れです。
[見どころ]
鹿を銃殺し、内臓を抉るオープニングは見ていて気持ち悪いが、シアーシャ・ローナンの演技が美しいです。
「I just missed your heart(心臓外しちゃった)」というハンナの最初の一言は伏線にもなっているし、ハンナのキャラクターを一言で表しているようで始まり方が好きでした。
またハンナというキャラクターは冷徹でありながらも人間的な要素が残る人物であり、難しい役所であるが、シアーシャの演技にはこのキャラクターが存在できるような説得力がありました。
「ブラックホーク・ダウン」(2001)
[あらすじ]
1993年、クリントン政権下。ソマリア内戦モガディシュでの戦闘を映画化。実話ベース。ソマリアの民族紛争に米軍が介入し、将軍捕縛の作戦を決行するが作戦はうまくいかず撤退を余儀なくされた一部始終が描かれる。
[監督]
リドリー・スコット
[キャスト]
ジョシュ・ハートネット
エリック・バナ
ユアン・マクレガー
トム・ハーディー
[状況]
1992年ソマリアで部族間の戦いが激化し、30万人の人々が餓死していました。アイディード将軍が食料を奪い敵対部族を圧迫します。米国は海兵隊を送り、一度は秩序が回復するも、将軍が国連軍に宣戦布告します。米国は特殊部隊を投入するが事態は好転しません。1993年10月、ウィリアム・F・ガリソン少将が武器商人と交渉し、アイディード将軍捕縛を狙います。レンジャー隊とデルタフォース隊が連携し、バカラ・マーケットで作戦を決行される。
[展開]
米軍ヘリ隊が目標地点に到着し、米兵が侵攻します。しかし、ブラックホーク墜落で戦況が不利になっていきます。米兵達は墜落地点へ移動し、生存者を確認したいが、ソマリア民兵が増加し、戦況は悪化して、さらに二機目のブラックホークも墜落。米兵は市街戦に巻き込まれ、窮地に陥いっていく。
[見どころ]
この映画の見どころは全体の3分の2が戦闘を描いているほど銃撃戦の描写が長いです。そしてめちゃめちゃリアルです。淡々と描いているところに戦争の恐ろしさを感じます。
また当時から世界NO1の軍事力を誇るアメリカ軍でさえ、こんなにも苦戦を強いられている闘いを見ると本当に戦争が馬鹿馬鹿しく思えてきます。30万人の餓死者を出したからとは言え戦争以外で解決の道はないなのかという憤りを感じました。第二次大戦以降の戦争をリアルに描いた作品でおすすめです。
コンテイジョン(2011)
[あらすじ]
未知のウイルスが世界同時多発的に発生し次々と感染していくパニック・スリラー。
[監督]
スティーヴン・ソダーバーグ
[キャスト]
ケイト・ウィンスレット
マット・デイモン
マリオン・コティヤール
ジュード・ロウ
[状況]
香港での出張を終えた女性が奇妙な死を遂げるところからこの物語は始まります。
未知の感染症が急速に世界に拡大し、医療システムの崩壊や暴動が発生したり、急ピッチでワクチン開発が行われたり、混乱を利用して利益を追求する人たちが描かれます。
ウイルスとの戦いを多角的な視点で展開し、人々がどのように危機を克服するかをリアルな描写で伝えている様子はコロナが流行り出した時のような状況に似ています。
[展開]
ワクチン開発を急ピッチで進めるが、実用化には副作用の効果を待ち、検証を重ねければなりません。しかしそんな時間はなく、毎日死者数は増加傾向にある。
そのため自らにワクチンを注射し、効果を示そうと命懸けでこのウイルスと闘っていきます。このウイルス感染を止めることはできるのか?がこの映画のテーマです。
[見どころ]
俳優陣の演技が最高です。ジュード・ロウは混乱に乗じて金儲けを企むブロガーで、陰険な感じを丁寧に描いている。それ故に面白い。ケイト・ウィンスレッドも非常に説得力のある演技で素晴らしい。
「スーサイドスクワッド」(2016)
[あらすじ]
スーパーマンが居なくなった世界で、悪党達を追放するために、命令に背くと自爆する装置を身に着けた凶悪犯で構成された特殊部隊を結成。悪党V悪党の戦いをコミカルに描いたアクションムービー
[監督]
デヴィッド・エアー
[キャスト]
ジャレット・レト
マーゴット・ロビー
ウィル・スミス
[状況]
「エンチャントレス」と呼ばれる魔女の心臓がジューン・ムーンという博士に取り憑き、体を支配して、人類を滅亡させようとします。人類を救うため、死刑や終身刑を宣告された特殊能力を持つ囚人を集めて、討伐部隊「スーサイド・スクワッド」を結成します。しかし集められた囚人たちを思うようにコントロールできません。
[展開]
囚人たちは当初、テロという嘘の目的で召集され、それが原因で逃げ出すものが出てきたりなどして上手く「スーサイドスクワッド」は機能しません。しかしフラッグ大佐の気持ちに心を動かされ最後は一致団結して、強敵エンチャントレスに挑んでいきます。
[見どころ]
ストーリーの内容は平凡で心に残るものはありませんが、映画の中で描かれるハーレークイーンとショーカーの恋模様は見ていて惹きつけられるところがあります。
ハーレークイーンはジョーカーにただ利用されているだけなのか、サイコパス同士の本気の恋愛事情なのか曖昧な感じが絶妙で、この二人が出てくるシーンのみワクワクを覚えます。
この映画のために行ったジャレット・レトの役作りで、撮影前にマーゴット・ロビーに死んだネズミを送りつけるという奇行を行ったことは有名です。
その成果が確かに、映画の中でのジョーカーのサイコっぷりに現れています。
ヒースレジャーとは一味違うジョーカーを見事に演じていました。
「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」(2021)
[あらすじ]
大人気アクション映画「ワイルド・スピード」シリーズ9作目、悪役サイファーが、主人公ドムの実弟であるジェイコブを味方につけて戦いを挑んでくる、スーパーアクションムービー。
[監督]
ジャスティン・リン
[キャスト]
ヴィン・ディーゼル
ミシェル・ロドリゲス
ジョーダナ・ブリュースター
[状況]
ドムたちにミスター・ノーバディから南米モンテキントで極秘救助要請が届きます。そのミッションは、世界中のコンピュータや兵器を操る装置「アリエス」の回収すること。ドムの弟ジェイコブが率いる武装集団に襲撃され、装置を奪われる。ドムたちが調査し、「アリエス」は2つに分解され、別々に隠されており、「キー」も別に存在しました。ジェイコブは独裁者の息子オットーと共謀していた。
[展開]
レティとミアは東京でハンと再会。ドミニクはロンドンでマグダレーン・ショウの協力を得てオットーに近づくが、インターポールに逮捕される。しかし、実はマグダレーンの手引きでインターポールに変装した仲間の妹が率いるチームで、ドムは解放される。
[見どころ]
カーアクションが見もの。それ以外は個人的に大したことはないと思います。
この映画で描かれている日本の描き方も微妙なところです。
でもやっぱりアクションがすごいからワイルドスピードシリーズは見てしまいます。
「スティーブ・ジョブス」(2015)
[あらすじ]
アップル共同創業者の1人スティーブ・ジョブスの伝記的な映画です。1984年のMactonish、1988年のNeXTcube、1998年のiMacの「3つ発表会の数時間前の舞台裏のみを描く」という斬新な物語構成でジョブスの深い心情を炙り出すストーリー。
[監督]
ダニー・ボイル
[キャスト]
マイケルフ・ァスベンダー
ケイト・ウィンスレット
セス・ローゲン
ジェフ・ダニエルズ
マイケル・スタールバーグ
[状況]
1984年,カリフォルニア州のクパチーノで、「マッキントッシュ(Macintosh)」の発表が行われる数時間前から物語は始まります。
しかし、ジョブスの理想の高い発表の内容は周りのスタッフを混乱させていきます。さまざまなトラブルがジョブスの周りで生じ、ジョブスは解決策を迫られていきます。例えば、
・ジョブスたちが売り込むコンピュータが「ハロー」と観衆に語りかけるパフォーマンスをする予定がなぜか上手く機能しない
・表紙に載らなかったタイム誌の段ボールを見つけて過去に抱いた屈辱が蘇ってくる→(精神を掻き乱される。)
・舞台ホールの非常灯を消すことは違法とされているが、ジョブスの見せ方にこだわりがあり、スタッフと揉める。
・元カノが子供と一緒に訪れ養育費を要求される。などなど
[展開]
このようにジョブスの発表前の混乱とイザコザが、年を超えて3回繰り返されます。人間関係や、ジョブスの心境がこの3つの時間軸を通して変わっていきます。
大きな物語的なオチはないが、スティーブ・ジョブスの心の葛藤、両親との関係などが徐々に明かされていく話です。
[見どころ]
ジョブスの功績を全面に押し出す映画ではなく傲慢さと理不尽さが際立つ映画です。
この映画のポイントは、スティーブ・ジョブスの特性を表す「現実歪曲フィールド」という言葉です。これは「想像もしなかったことを周りの人に成し遂げさせる能力」です。
この「現実歪曲フィールド」の良い面は、紛れもなく全世界に「アイフォン」を広めた功績ですが、この映画の前半のほとんどがこの特性の負の面を描いています。彼は私生活ではクソ野郎と言われていた理由がわかります。
「自分の描いた理想は何がなんでも実現させる」ことは外から見れば芯の通った素晴らしいことですが、自分のやりたいことを押し通すためには、仲間を脅迫し、違法なことにも中途せず、人の気持ちを推し量れないという負の側面があります。
映画やドラマで見ている分には面白い人で済まされますが、仮にこの人が自分の父親であったらゾッとしますね。
また俳優陣の演技も素晴らしいです。中でもケイト・ウィンスレットの秘書役は見事です。
彼女のジョブスに対する苛立ちや愛情がとても細かく描写されています。
「ドライブマイカー」(2021)
[あらすじ]
舞台俳優でもあり、演出家の主人公である家福は、愛する奥さんと暮らしていた。
家福は彼女の浮気現場を目撃するものの、何事もなかったかのように振る舞います。そんな浮気をしていた奥さんが何か言いたいことを家福に残したまま急死してしまいます。
その2年後、家福は「ワーニャ伯父さん」を上演するため、演出家のポジションから俳優をオーディションで選び、公演に向けて稽古を重ねていく。
これらの俳優たちや、専属ドライバーとの関わりを通して生きる希望を取り戻していこうとする話
[監督]
濱口竜介
[キャスト]
西島秀俊
三浦透子
霧島れいか
[状況]
家福は、愛車「サーブ900ターボ」を運転中に録音した台詞を聴きながら、台本を身体に染み込ませていく舞台俳優でもあり、演出家でもあります。
口数は少ないが、戯曲に対して誠実に向き合っている印象があります。
奥さんは売れっ子の脚本家であり、実は浮気を繰り返しています。
家福はその事実を知りながらも、奥さんを責めず、何も問題は抱えていない円満夫婦のような生活をしています。
この夫婦の中で一番特殊な性質は奥さんの物語の着想法です。
それはなんとセックス中に物語ののインスピレーションを受け、奥さんは行為中に物語のあらすじを唱え、家福はその物語を記憶し、あとでまとめ、脚本に起こす手法で物語を書くという方法です。
そんな一種変わった習慣をもつ二人ですが、物語は思わぬ方向に転がっていきます。
[展開]
奥さんが家福に伝えたいことがあると言い残したまま、それを伝えることなく急死してしまいます。
この伝えられなかった奥さんのメッセージが家福の人生に重くのしかかってきます。
それから2年後に「ワーニャ伯父さん」を演出することになり、俳優たちをオーディションで選び、稽古を重ねていく日々が始まります。
その際にプロダクションの事情で家福は専属ドライバーをつけなければならないことになり、物静かな女性をドライバーとして迎え入れることになります。
このドライバーとの関係性がこの物語の主軸となって展開していきます。
[見どころ]
この物語の中で出てくる台詞を覚える時に感情をつけて覚えない家福のやり方は、実は演劇的に普通で有名なやり方です。
セリフに感情をのせて覚えてしまうとその感情でしか台詞を言えなくなってしまいます。
そのため、表現が固定され自由な演技ができなくなってしまいます。
なので基本的にはセリフは棒読みで覚えます。
だから本読みですら家福は感情を取り除いてほしいと言いますが、実際にそのような演出家も多く存在します。
ちなみに録音したものを繰り返し聴きながら覚える手法は、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でディカプリオが演じたリック・ダルトンもやっていますよね。
実際の俳優がこの映画を見ると「あるある」のものが非常に多いです。オーディションのシーンも、なんだかあっさり始まってあっさり終わっていますが、実際あんな感じのオーディションは多いです。(趣味とか出身とか別に言わず、課題だけやって終了みたいな)
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