「リア王」は、主人公であるリア王と3人の娘を中心に人のやましさやあさましさが感情をむき出しに描かれているシェイクスピア4大悲劇の1つです。
両目をくり抜かれたり、最愛の娘を失う父親の慟哭、腹違いの兄弟と父親への復讐などえげつない人間の業について考えさせられる深いテーマ性を持っています。
「リア王」相関図
あらすじ
リア王は3人の娘に領地を分け与えて、隠居生活に入ろうとしていた。
三女コーディリアはリア王の意図に反した言動をしたため、領地を与えられず、長女と次女の二人に領地を分け与えることにした。
リア王に嫌われたコーディリアはフランス国王に迎え入れる。
グロスター伯の息子、エドモンドは兄エドガーが父親の命を狙っていると唆す。
エドマンドは兄エドガーに危険が迫っているとし、どこか遠くに逃げろとうそぶく。エドガーは乞食に変装し身を隠す。哀れなトムという名前に変えて生活を始める。
ゴネリル邸に滞在しているリア王は横柄な態度で周りのものに迷惑をかけ続けるので、ゴネリルはリア王に仕える側近の数を減らすように促す。そのことに対してリア王はブチギレて次女リーガン邸を訪れる。
リーガンはゴネリルと結託し、リア王の側近の数を減らすことに賛同する。リア王はこれが受け入れられず、道化師と共に嵐の中、荒野へ向かう。
リア王は荒野で哀れなトム(エドガー)に出会う。グロスター伯はリア王を心配し、食糧やシェルターを用意し、世話をする。コーリディアに会いたいリア王はグロスター伯にフランス、ドーバーまで手配してもらう。
リーガンとその夫コーンウェルはグロスター伯をリア王を助けた罪で捕まえ拷問する。グロスター伯はこの拷問で両目を失う。哀れなトムは父親グロスター伯を探し出し、再会し、国王に再会するためドーバーまで連れて行く。
ゴネリルとリーガン率いるイギリス軍はエドモンドのサポートもあり、フランス軍を打ち負かす。フランス側にいたリア王とコーディリアは捕らえられ、コーディリアは処刑される。
哀れなトムはエドガーとの決闘の末、勝利する。ゴネリルはリーガンを毒殺し、自分もその毒で命をたつ。リア王はコーディリアの死に絶望し、慟哭する。
主な登場人物
・リア王 王位を退くために、領地を3人の娘に分け与えようとする。
・コーディリア リアの娘、三女
・ゴネリル リアの娘、長女 (オールバニ公という夫がいる)
・リーガン リアの娘、次女(コーンウォール公という夫がいる)
・ケント伯 リアの忠臣。リアに諫言したために追放され、以降は変装してリアのもとに仕える
・グロスター伯 リアの重臣。エドガーとエドマンドの二人の息子を持つ
・エドマンド グロスターはくの息子、次男。愛人の息子で、見下されてきた
・道化 皮肉と言葉遊びでリア王と一時期共に生活する
・オズワルド ゴネリルの執事
Act1 リア王の隠居、エドマンドの計画
グロスター伯は、正妻の子である長男エドガーと愛人の子である次男エドマンドの二人の息子がいました。 彼は実はどちらの息子も愛しているとケント伯に告げます。
しかしエドマンドは愛人の子である事を理由に見下されていると感じていて、兄を陥れて父の領地を引き継ぐ野心を抱いていました。
リア王は自らの歳を考慮し隠居生活を考えていた。退位後の領地を3人の娘に分け与える方針を発表する。
自分のことを深く愛する娘から順番に領地を分け与えてやりたいと説明すると、「どれくらい父親のことを愛しているか」と言いう質問を3人の娘に問いかける。
三女コーディリアはそんな馬鹿な質問には答えられないと突っぱねるとリア王は激怒し勘当する。
コーディリア以外の二人に土地を相続させることが決まった
ケント伯はリア王とコーディリアの仲をとりもとうとしますが、火に油を注ぎ、ケント伯とコーディリアは追放されます。
その結果フランス国王に求婚されコーディリアはフランスの王妃として迎え入れられます。
エドマンドはグロスター伯の愛人から生まれた息子で、そのためにこれまで馬鹿にされてきたことを観客に向けて暴露します。加えてある計画を吐露します。それは、父には兄が命を狙っている、兄には父が命を狙っていると唆すことです。
リア王はひと月ごとに娘二人の家に行き来し、泊まっていました。(現在で言う折半介護生活)
リア王との共同生活は、長女ゴネリルにとって、ことあるごとに難癖をつけくるワガママなリア王の態度に我慢の限界でした。もっと分別のある対応をすると共にリア王の召使いの数を減らすと宣言します。
そのことに対してブチギレたリア王は次女リーガンの家に行きます。
酷い扱いを受けたリアは次女リーガンのもとで同情を買おうとしますが、リーガンは長女の味方をし、逆に責め立てられます。
Act2 振る舞いが老害で嫌われるリア王は荒野へ向かう
エドマンドは計画を実行する。身の危険を感じたエドガーは城から逃げ、グロスターはエドガーを勘当してエドマンドに領地の相続権を与える
リーガンとコンウォールは、身を挺して親を守ったエドマンドに感服して彼を迎え入れました。
弟に出し抜かれたエドガーは、このままでは追手に見つかり殺されてしまうので、汚い乞食に変装し、
自らのことを「Poor Tom」(哀れなトム)と名づけながら暮らしていきます。
リーガンとゴンネルは結託し、二人でリア王を責めます。
リア王は途方に暮れて荒野へ向かいます。
Act3 荒野で出会う人々、残酷な処罰
道化と共に荒野にやってきたリア王は嵐の中で独白をします。
グロスター伯はフランス軍がイギリスに乗り込んできた情報を手に入れ、エドマンドに相談する。
これをエドマンドは利用し、罪を着せリーガンとコンウォールがグロスターを捕まえる。
両目を抉られる刑に処される。
荒野を彷徨っていたリアをケントが見つけ、小屋の中へと避難させます。 そこにはなんと父殺しを企てた罪で追放されたエドガーもいました。リアはこの時貧しい人たちの生活に想いを寄せていました。
グロスター伯はリアを助けるためにやってきます。彼はフランスに通じているためフランス軍にリア一行を匿ってもらうように促します。こ
グロスターがリアを助けたことや、フランスと通じていると言うことでコンウォールに捕えられ、
拷問を受けます。処罰は厳しくグロスターは両目を抉られてしまいます。
Act4 最愛の人と再会
哀れなトムは目の見えなくなった父親グロスターと再会しショックを受ける。
グロスター伯を崖の上に連れて行き高さの低い場所で飛ばせる。グロスター伯は飛んだ瞬間気を失う。
目覚めた時に「エドガーは奇跡が起きてあなたは死なずに済んだ」と一芝居打ち、これから生きていくように説得する。
オズワルドはリーガンを喜ばせるためにグロスター伯を殺しにやってくるが、エドガーに返り討ちにされ殺される。殺される直前一通の手紙を渡す。その手紙の内容はゴネリルの夫の殺害計画が記されていた。
ゴネリルは夫を殺害し、エドマンドと結婚をしたいと思っていた。。
リアとコーディリアは再会し、コーディリアはリア王を許した。
Act5 リア王の悲劇
エドマンドとアルバニーは対フランスとの戦争において準備を始める。リーガンとゴネリルはエドマンドの取り合いで関係が悪くなり、口論にまで発展する。エドマンドは観客に向かって、リーガンとゴネリル両方をものにすると宣言する。
フランス軍は敗北し、フランス側についていたリア王とコーディリアはイギリス軍に捉えられ、収容される。
ゴネリルはリーガンとエドマンドの結婚を阻止しようとリーガンに毒を盛り、その毒でリーガンは死亡。
その後ゴネリルは短剣で自殺をはかる。エドマンドは死ぬ直前に、密かにコーディリアの処刑が行われていたことを打ち明ける。
リア王はコーディリアのそばで悲しみに暮れる。ケント伯が慰めるためにリア王に話しかけるが、リア王は精神が崩壊しており、コーディリアを失った悲しみ以外のことに注意を向けられない。その悲しみの中でついにリア王の命も尽きた。
「リア王」を演じた俳優たち
アンソニーホプキンス
2018年 TV film
歴代の「リア王」の中でもダントツに素晴らしい作品。アンソニーホプキンスはリア王として、エマトンプソンがゴネリル、フローレンス・ピューがコーディリアを演じている。Amazonでデジタル配信されている。
エマ・トンプソン
フローレンス・ピュー
イアンマッケラン
・2008年・TVmovie
・Natopnal theater live
ローレンス・オリビエ
1983年・TV movie
・Granada Television
リア王を描いた映画監督たち
ピーターブルック
1953年脚本として参加。オーソンウェルズ主演
1971年監督として。 ポールスコフィールド主演
黒澤明
1985年 「乱」
仲代達也、寺尾聰などが出演
ジャン=リュック・ゴダール
1987年 「ゴダールのリア王」
フランシスフォードコッポラ
1990年 「ゴッドファーザーパート3」
リア王の要素が導入された
リア王に影響を受けたアーティスト
ショスタコービッチ
シェイクスピアの傑作「リア王」はロシアの偉大な作曲家にも影響とインスピレーションを与え、「荒野の嵐の中」や「コーディリア」のイメージを歌曲にして表現しています。こういった音楽から物語をイメージするのも面白いですね。
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