シェイクスピアの話は、なんだか古臭くて小難しく、忌み嫌う人も多いかもしれませんが、「ハムレット」は読めば読むほど面白くて深い戯曲であることは間違いありません。ハムレットの面白さは一言では語れませんがあえて一言で言うなら【人間の狂気】が描かれています。登場人物の多くは精神的にズタボロになって狂ってしまう。そんな恐ろしくも、身につまされる作品です。
ハムレット相関図
ハムレットの簡単な相関図です。主に10人の関係性の中で物語が展開していきます。
ハムレットで面白い側面の一つは関係性の変化です。
例えばオフィーリアとは恋人関係ですが、その関係性はだんだん悪化します。
うわべだけの友達ローゼンクランツとギルデスターンとの関係性も物語の中で変わっていきます。
急に誰かを信じられなくなった時、相手の本音が知りたくてかまをかけるようなことを人間はします。
言葉遣いや態度を変えてその人を探ってみたり、時には嘘をついて人の本性を探り出します。
ハムレットはまさにそんな行動を取ります。「誰が信頼できて、できないのかを見定めたい」と思っています。
だから道化(気狂い)を演じて信頼できる人かを試しています。
ハムレットがどこで、どんなふうに信頼を探っているのかに焦点を当てて読み進めてみると、ハムレットがさらに面白くなってきます。
あらすじ
デンマーク王が亡くなり、その妃(ガートルード)が国王の兄弟クローディアスと再婚する。デンマーク王の息子ハムレットは葬儀のためにエルシア城に訪れる。
ある晩、ハムレットは父親の幽霊を見る。 幽霊はクローディアスが犯人であると告げ、復讐を果たすように要求する。
ハムレットは父親殺害の真相究明のため計画を立てる。周りの人から怪しまれないように気狂いを演じる。その様子を見て心配したクローディアスは、ハムレットの旧友ローゼンクランツとギルデスターンにハムレットの奇行原因を突き止めさせる。
ハムレットは国王殺しの真相を暴くために、城に訪れていた旅役者たちに一芝居してもらうように頼む。芝居の内容は、寝ている国王を殺す男の話。これをクローディアスに見せて反応をうかがう。
ハムレットは恋人のオフィーリアに、決して愛したことはなかったと告げ、
「尼寺に行って子供を産むな」と暴言を浴びせる。
ハムレットは母親ガートルードに自分の夫が死んでしまったのに、なぜ平然としていられるのかと糾弾する。
母親との口論の最中、ハムレットは誤ってポローニアスを殺害してしまう。
クローディアスはハムレットをイギリスに追放する。
ハムレットにフラれたオフィーリアは、さらに父親を失った悲しみで、気がおかしくなり自殺する。
それを知ったレアティーズはハムレットに強い憎しみを覚える。
クローディアスはこのレアティーズの気持ちを利用して、ハムレット殺害計画をレアティーズに持ちかける。
ハムレットはレアティーズと決闘する。
その決闘の間、ガートルードは毒を飲み、ハムレットはクローディアスを殺害し、
自身もレアティーズとの闘いで負った傷が原因で死亡する。
主な登場人物
・ハムレット デンマーク王子
・幽霊 ハムレットの父親
・クローディアス 現デンマーク国王であり、ハムレットにとってはおじさん
・ガートルード ハムレットの母親
・オフィーリア ハムレットの恋人
・ポローニアス オフィーリアの父親
・レアティーズ オフィーリアの兄 パリに留学していた
・ホレイショー ハムレットの信頼できる親友.ウィッテンバーグで出会った
・ローゼンクランツ ハムレットの旧友1 クローディアスのスパイ
・ギルデンスターン ハムレットの旧友2 クロディアスのスパイ
・ホーティンブラス ノルウェーの王子
・墓掘り
Act1 エルシア城で父親の幽霊が現れ、ハムレットに復讐を求める。
ハムレットの父親、デンマーク王が亡くなった。その幽霊が城の一角に現れる。
ハムレットの親友ホレーシオがその幽霊と対峙する。
父親が亡くなってから早すぎる母の再婚に驚きを隠しきれないハムレット。
しかも母の結婚相手はハムレットの叔父にあたるクローディアス。
きな臭さを感じるハムレットは父親の死に違和感を感じている。
ホレーシオは、幽霊を見た話をハムレットに報告する。
幽霊の風貌は今は亡きデンマーク王そのものだったと聞いたハムレットは幽霊と対峙することをきめる。
オフィーリアはハムレットが自分のことを愛してくれていると父親ポローニアスにそれとなく告げる。
しかしポローニアスはその愛を実らせたくないために、オフィーリアにハムレットとの接見を禁じる。
ハムレットは幽霊に真実を告げられ、復讐を誓わされる。
Act2 ハムレットはクローディアスが父親を殺害したことを確かめるため芝居を企画する。
オフィーリアはポローニアスにハムレットの様子がおかしいことを告げる。
様子がおかしいハムレットを見てクローディアスは心配になる。
そこでクローディアスはハムレットの旧友、ローゼンクランツとギルデンスターンに
ハムレットの様子がおかしい原因を探らせる。
ポローニアスはオフィーリア使って、ハムレットが気狂いになったことを証明する計画を
クローディアスに提案する。
旅役者一座が城に到着した。
ハムレットはクローディアスが王を殺した証拠が欲しい。
だから王殺しの芝居を見せてその反応で証拠を掴もうと計画する。
ハムレットは旅役者に役者のあり方を説く。
Act3 王の罪は暴かれハムレットは母を糾弾するが、その際に誤ってポローニアスを殺害してしまう。
ハムレットは「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」で有名な自己問答を始める。
ハムレットとオフィーリアの最後の会話。
ハムレットは「愛していたし、愛してなかった。」「尼さんになって、子供を産むな」と
オフィーリアに告げる。
その様子をクローディアスとポローニアスこっそり見ている。
ハムレットは親友ホレーシオに芝居中にクローディアスに不審な動きがないかよく見ていてほしいと頼む。
ハムレットはローゼンクランツとギルデンスターンがクローディアスのために見張役になっていることを自供させ、失望する。
劇中で王が殺された時、クローディアスに反応があった。
これをハムレットとホレーシオは見逃さず、王殺しの犯人はクローディアスである証拠を掴んだ。
クローディアスは部屋で自分の罪を懺悔していた。
ハムレットはこの様子を見て「今なら復讐を果たせる」と思うものの、今彼の魂は天国に近いとも思う。
今、復讐を果たしてしまえば彼は天国へ行ってしまう。と思い復讐は別の機会に先延ばしにする。
ハムレットはガートルードとの口論の際、隠れていたポローニアスを誤って殺害してしまう。
Act4 ハムレットは追放され、オフィーリアは死亡。レアティーズが復讐を誓う
クローディアスはイギリスの刺客を使いイギリスでハムレットを殺害するように仕向ける。
オーフィーリアは精神的におかしくなり、突然歌い出す奇行を繰り返し行う。
ハムレットに酷い仕打ちをされ、父親も殺されたという状況で狂ったとされる。
そしてオフィーリアは死亡する。
オフィーリアの兄レアティーズは、自分の父親ポローニアスが殺された話を聞き、帰国する。
ハムレットに憎しみを覚える。
イギリス行きの船が海賊に襲撃され、ハムレットを捕獲する。
海賊はハムレットに心を開き釈放する。
ハムレットは帰国する。
ガートルードがオフィーリアが自害していたことをレアティーズに告げる。
レアティーズはハムレットの復讐心に燃える。
Act5 ハムレットとレアティーズの決闘の末、ハムレット・国王・王妃・レアティーズ全員死亡する。
オフィーリアは自殺したのに教会のヤードに埋葬するのはどうなのか?
というテーマで口論している墓掘り人たちがいる。
オフィーリアの葬儀が始まり、レアティーズが手を合わせている。
そこにハムレットが登場する。
クローディアス公認のハムレットVSレアティーズの決闘が始まる。
決闘が始まる前、ハムレットはレアティーズに謝罪する。
一方クローディアスはハムレットが事故死してしまうよう毒を仕込む。
ハムレットが飲むはずの毒入りワインをガートルードが飲み、ガートルードは死亡する。
レアティーズは毒を仕掛けた計画はクロディウスと共謀したとハムレットに告げる。
それを知ったハムレットはクローディアスを殺害する。
決闘で負った傷が原因でハムレットとレアティーズも死亡する。
おすすめモノローグ
ハムレットが父の幽霊からことの真相を聞いた後の独白です。
このセリフから凄まじい怒りや戒めを感じますね。
「このことだけは絶対に忘れてたまるか!!昔のどうでも良い記憶なんか消えてしまってもいい、このことさえ忘れずにいればそれでいい」
凄まじい出来事が起きた後、「今言われたことを絶対に忘れない」と思ったことは誰しもあるでしょう。
嬉しい時、悔しい時、フラれた時、裏切られた時などの様子を感情と共に記憶して、「それをバネに頑張ろう」目的に再チャレンジしようなどあるかと思います。
痛いほど胸に刻み込んで、いつでもあの時と同じ気持ちになれれば、やらなければならないことに向かえる。
そんな言葉にならない気持ちを表現したセリフなので個人的に好きなモノローグです。
ハムレットの分析
ハムレットは国王殺しの犯人が現国王クローディアスである証拠を突き止め、復讐を果たすということが描かれています。
この復讐を果たすために狂気(キチガイ)を演じる行動をとることにまず惹きつけられます。ハムレットをもしあなたが演じるとするならどのような狂気を演じてみたいですか?
その狂気は自分でコントロールできるものなのでしょうか?
条件反射のように出てくる恐怖心を押し殺しながら狂気を演じているとしたらどうでしょうか?
オフィーリアの狂気とハムレットの狂気に違いがあればどのようなものでしょうか?
ハムレット以外の登場人物はなぜハムレットが狂っていると思うのでしょうか?ハムレットのどんな行動を見たら狂ってると思うのでしょうか?それはもしかしたら舞台裏で見たものかもしれないし、舞台上で察することかもしれません。
ハムレットは最初に幽霊を見た時どんな反応をするでしょうか?また、
ハムレットたちにとって幽霊はどのように見えているのでしょうか?心霊スポットに行った時に感じるあの薄気味悪さはあったのでしょうか?ハムレットは一国の王子であることも忘れてはいけません。例えば、天皇陛下が幽霊と対峙したらどんな反応をするでしょうか?そう言うところから想像してみるのも面白いかもしれません。あらゆる可能性を想像して楽しみましょう。
オフィーリアの分析
オフィーリアはハムレットから甘い言葉を囁かれたことに対して父親に相談するような人です。もちろん一国の王子相手から言い寄られているともなれば父親に相談するかもしれませんが、なぜ父親に相談したのでしょうか?この会話の終わりにオフィーリアは「言いつけに従います」と答えます。彼女にとって父親は絶対なのです。
そんな父ポローニアスとどんな生活をしていたのでしょうか?どんなところを尊敬していて、どんなところに鬱陶しさを感じているでしょうか?
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