2023年5月に配信された傑作映画を7作品紹介します。
「アイ・アム・サム」(2001)
[あらすじ]
知的障害を持つ父親が最愛の娘の親権を奪回するために高慢な弁護士を雇い、娘を取り戻そうとする感動ヒューマンストーリー。
[監督]
ジェシー・ネルソン
[キャスト]
サム:ショーン・ペン
ルーシー:ダコタ・ファニング
リタ:ミシェル・ファイファー
[状況]
サム・ドーソン(ショーン・ペン)は知的障害を持つ男性で、一人娘のルーシー(ダコタ・ファニング)と二人で暮らしています。彼はルーシーを愛情を持って育ててきましたが、彼の知的能力は7歳の子供と同程度なので、児童福祉施設が彼の養育能力に疑問が投げかけます。
ルーシーの7歳の誕生日を迎えると、いよいよ公的機関がサムの能力ではルーシーを育てられないと判断し、
ルーシーは児童福祉施設に強制的に預けられてしまいます。サムは、ルーシーを取り戻すために弁護士リタ・ハリソン(ミシェル・ファイアファー)を雇うことにしました。
[展開]
しかしこの弁護士リタは出世ばかりを気にして生きてきたようなやり手弁護士です。
お金を多く取れないサムのケースに最初は、気乗りしていませんでしたが、
渋々サムの弁護を引き受けることにします。
こうしてルーシーを奪回するための裁判が始まります。・・・が、リタがいくら優秀な弁護士でも、
普通の大人のような思考回路ができないサムの弁護は相当ハードルが高く、勝てる見込みがありません。
そんな父親を見かねたルーシーは思いもよらぬ行動に出るのですが、、、、
[見どころ]
まず、7歳程度の知能しか持たない父親ショーン・ペンの演技が素晴らしいです。
我が子を取り戻すために必死になる姿に心打たれます。
不恰好で情けなくて、とろい父親の姿が本当に胸に響いてくる傑作です。
私が最初にこの映画を見た時は10代だったと思いますが、号泣したのは今でも忘れられません。
どんなにカッコ悪くて、質素な暮らしをていたとしても、人を愛する気持ちがあればその人の人生は美しいんだと強く思わせてくれた映画でした。
逆に外面だけが良くて、いつも時間に追われているような生活をしていると、どこか人間味がなくなって大事なことを忘れてしまうという教訓にもなっている映画です。
「グリーン・マイル」(1999)
[あらすじ]
1940年代の刑務所が舞台。死刑囚ジョン・コーフィの純粋な心と神秘的な力に触れ、看守ポールの人生が大きく変わる。真実と罪、永遠の命の贖いを描いたヒューマンドラマ。
[監督]
フランク・ダラボン
[キャスト]
ポール:トム・ハンクス
ブルータス:デヴィット・モース
ディーン:バリー・ペッパー
[状況]
1940年代のルイジアナ州がこの映画の舞台です。ポール・エッジコムブは冷酷な犯罪者たちが収容されている死刑囚の刑務所、通称「グリーンマイル」の看守長を務めている。ある日、体格が巨大な男ジョン・コフィーが収監される。彼は2人の少女を殺害したとされてこの刑務所に送還されてきた。
[展開]
ジョンは恐ろしい犯罪者で血も涙もない化け物とされているが、実は彼の人格は穏やかで、特殊な治癒能力を持っていることが明らかになる。看守長ポールはジョンが無実である可能性を疑い始める。
[見どころ]
個人的な名場面は、新人看守が失禁して「このことは絶対に口外するな」と言うシーンです。
「ヒート」(1995)
[あらすじ]
強盗中毒集団と仕事大好き刑事の駆け引きを描いた実話をもとにしたハードボイルド・アクション映画。全盛期の「デニーロ✖️パチーノ」コンビ映画の普及の名作。のちに「アイリッシュマン」で再共演する。
[監督]
マイケル・マン
[キャスト]
ヴィンセント・ハナ:アル・パチーノ
ニール・マッコリー:ロバート・デニーロ
クリス:ヴァル・キルマー
[状況]
物語はニール(デ・ニーロ)率いる強盗集団が現金輸送車を襲い、ヴァン・ザントの無記名債券を奪うシーンから始まります。強盗新入りのウェイングローが殺人を犯し、逃亡してしまう。ニールはヴァン・ザントから奪った債券を買い戻させようとするが、裏切られて命を狙われます。
[展開]
捜査を続けるヴィンセント刑事はニールの動きを追い、犯罪阻止を試みようとします。銀行襲撃が決行され、ロスの大通りでニールたちと警官隊の壮絶な銃撃戦が始まる。
路上でギターを弾く女性・アニーと恋人となり、2人はワールド・トレード・センターの夢に向かって共に歩み始めます。。
[見どころ]
この映画の見どころは、壮絶な12分間の銃撃シーンです。
市街地のど真ん中で警察と撃ち合うシーンはめちゃくちゃリアルで映画史に残るベストシーンです。
因みにこのシーンの中でヴァル・キルマーがマシンガンを交換するシーンが出てくるのですが、これがむちゃくちゃ手際良くかつスピーディーにできているため、名シーンとされています。
一時期アメリカ海軍では〈マシンガン交換はこの「ヒート」のヴァル・キルマーを参考にしろ〉と言われていたそうです。
またアルパチーノとデニーロの刑事と強盗犯の関係性が見どころです。
この二人はお互いにリスペクトしながらいつの日か殺してやるという複雑な関係性で成り立っています。
それはまるで、ドラゴンボールZ初期の悟空とベジータの関係に似ています。
敵同士でありながら、互いにスキルや仕事に対する情熱と貪欲さを認めていて、ワクワクしている状態ですね。
有名な話ですが、ニール・マッコリーとビンセント・ハナは実在の人物をイメージして作られました。
マイケル・マンはカフェで強盗と刑事が話し合っていたらしいということを聞いて、
このストーリーに興味を持ったそうです。そして強盗と刑事の大胆なクライムシーンを描きたいというよりは
彼らの実生活に焦点を当てて、もっと私生活を描きたいと思ったそうです。だからどちらの心情も汲み取れて、複雑な友情の形を表現できている作品として今でも根強いファンが多いんですね。
「マザーテレサからの手紙」(2014)
[あらすじ]
言わずと知れたマザーテレサ、神の導きで貧困救済に尽力する彼女が、教会の外で活動を広げていく。そんな彼女の献身的な姿と内なる闇と向き合う姿を見せる感動の実話ベースの物語。
[監督]
ウィリアム・リード
[キャスト]
エグザム神父:マックス・フォン・シドー
プラグ神父:ルトガー・ハウアー
テレサ:ジュリエット・スティーブンソン
[状況]
1946年、インドのカルカッタ。この時期のインドは独立に向けて混沌状態で、暴動と飢餓が蔓延る街だった。
マザー・テレサは路上の飢えた人々に食料を渡し、励まし続ける日々を送っていた。
ある日、彼女は黙想会に出席するため、列車に乗り込む。
そこで、彼女は「貧しい人々に仕えて共に暮らせ」という神からのメッセージを受け取ります。
マザー・テレサは全てを捨て、神に従ってスラムへ行くことに決めました。
[展開]
マザー・テレサはスラムで貧しい人たちと寄り添いながら生きていくことを決めます。
しかし彼女の活動に対して2つ問題がありました。ひとつは、地元民に怪しまれていること。
彼女がキリスト教徒であるためヒンドゥー教徒である地元の大人たちは彼女が布教活動をしにやってきたと思われ、中々心を開いてくれません。
しかし、彼女のひたむきな活動を通して地元民の対応も次第に変わっていきます。
そしてもうひとつは、キリスト教会の外で活動することは、原則許されていないことです。
なので彼女は自分の活動を認めてもらうために何回もローマ法王に手紙を書いて説得し続けます。
[見どころ]
マザー・テレサの目的は「飢えた人、裸の人、家のない人、体の不自由な人、病気の人、必要とされることのないすべての人、愛されていない人、誰からも世話されない人のために働く」ことでありました。
彼女の意思は次第に周りの人に受けられていき、「神の愛の宣者会」を設立するまでに至ります。
そんな彼女の工程を1から描いているので、当初は誰にも受け入れられない様子も描かれています。
そんな孤独な彼女が、ひたむきに自分の信念を貫いて行動する姿に心を打たれます。
歴史の教科書に載っているような人物ではあっても、実際にどのような活動をしたのかまでは意外と知らない人は多いと思います。私もこの映画を見るまではそうでした。
映画の素晴らしいところはこのような偉大だった人の功績を映像で伝えてくれるところにあります。
彼女の人生の全ては伝えきれないにしても、彼女の魂の一部に触れることはできます。
そしてこの映画を見終わった時には、彼女のように強く生きてみようと思わせてくれるそんな映画です。
「ショーシャンクの空に」(1994)
[あらすじ]
無実の罪を着せられた男がコツコツ脱走のための準備をして目的を実現させるヒューマンドラマの普及の名作
[監督]
フランク・ダラボン
[キャスト]
アンドリュー:ティム・ロビンス
エリス・ボイド:モーガン・フリーマン
サミュエル・ノートン刑務所長:ボブ・ガントン
ヘイウッド:ウィリアム・サンドラー
[状況]
主人公アンディ・デュフレーンは、妻とその愛人を殺害したという無実の罪でショーシャンク刑務所に送られます。
刑務所の厳しい生活の中で、アンディは囚人たちとの友情を育み、彼らに希望を与える存在となります。特に、レッドという囚人との深い友情が描かれています。アンディは彼の知識と教養を活かし、刑務所の図書館を改善したり、囚人たちに教育を施したりします
[展開]
アンディが入所した2年後のあるとき、アンディは監視役のハドレー主任が抱えていた遺産相続問題を解決する事の報酬として、受刑者仲間たちへのビールを獲得します。
この一件を機に、アンディは刑務所職員からも受刑者仲間からも、一目置かれる存在になっていきます。そしてトミー・ウィリアムズという男が刑務所に入所します。
彼はアンディの無実を証明するための重要な情報を持っていますが、その情報が明るみに出ることを恐れた刑務所長は、トミーを殺害します。こ
れにより、アンディの希望は一度は打ち砕かレてしまいますが、彼は新たに脱獄する計画を思いつきます。
[見どころ]
人生において最悪な出来事を経験したり、天にも昇る気持ちになったりすることは誰もが経験することだと思います。
この映画は刑務所に入れられた主人公が絶望と希望を交互に感じながら、
それでも前を向いて生きていこうとする映画です。
人生の底にいるような状況でも必ずその中にも希望があると思って生きること。
そんな人生において一番重要なメッセージが詰まっている映画です。
「ヤング≒アダルト」(2011)
[あらすじ]
37歳独身女性作家(シャリーズ・セロン)が、家庭持ちの元彼との復縁を求めてちょっかいを出すヒューマン・コメディー
[監督]
ジェイソン・ライトマン
[キャスト]
メイビス・ゲイルー:シャリーズ・セロン
マット:パットン・オズワルド
バディー・スレイド:パトリック・ウィルソン
[状況]
37歳作家メイビスは学生時代の恋人バディから赤ちゃんの誕生日パーティーの招待状を受け取ります。
この招待状が引き金となって、メイビスは破廉恥な計画を思いつきます。
それは、招待状をくれた元カレとヨリを戻すこと。
バディは結婚して赤ちゃんと奥さんがいるのにも関わらずです。
そうと決めたメイビスはバディのいる大嫌いな地元の田舎に帰還します。
そこで同級生のマットと再会し、少しずつ彼女の素性が明らかになっていきます。
[展開]
あの手この手でバディに近づき、ばっちりメイクをして色仕掛けを使いながらもうアプローチしていくメイビスでしが、さりげなくかわされ続けます。
それでもめげずにマットと相談しながら、バディを誘惑し続けるメイビス。
ついに、赤ちゃんの誕生日パーティーでバディに想いを告げることになるがその後、意外な展開に・・・
[見どころ]
シャリーズセロンはこの演技でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされました。
ノミネートされているだけあってKY独身女性を熱演しています。
パトリック・ウィルソンはトニークシュナーが書いた「エンジェルス・イン・アメリカ」に出ている俳優で、その時も、押しの弱そうな誠実さを持ったイケメン旦那役を演じていました。見た目からしてそんな感じのオーラ出ている彼はこの役にもピッタリはまっていました。
「さがす」(2001)
[あらすじ]
金に困った父親が指名手配犯にかけられた懸賞金300万円を手に入れるべく姿を消し、娘が父の行方を捜すサスペンススリラー
[監督]
片山慎三
[キャスト]
智:佐藤二朗
楓:伊東蒼
山内照巳:清水尋也
[状況]
大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。
[展開]
ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。
失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった
[見どころ]
突然姿を消した父親をさがす娘のストーリーから、自殺志願者の心のうちとそれを利用した快楽殺人がテーマになっていきます。
この物語は生きることに意味を見出せなくなった人たちの想いが描かれているので、最愛の人が死にたいと切望する状況をただ見守ることしかできない主人公の状況に心を抉エグられます。
「人として死ねるうちに死にたい」
という言葉を最愛の人から告げられてしまう悲しみと孤独は想像するだけで心が折れてしまいそうになります。
ただこの話はSFなどと違い、将来自分もそういう状況に陥る可能性があるのではないかという不安を掻き立てられ、他人事では済ませないサスペンスとして構成されているので、見たくなくても気になる心情に視聴者を誘い込みます。
片山監督が人が普段目を背けたくなる日常を視聴者に突きつけている感じがこの映画から痛いほど伝わってきます。
また俳優で言うと、成嶋瞳子演じる筋萎縮性側索硬化症(ALS)を持つ奥さん役の演技は非常に説得力があり、その痛いほどのリアリティがこの映画に大きく貢献していると感じました。もうただただ病気のせいで活力のなくなった人間を見事に描いています。
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